かないみき 2003.03
「カナイミキズイヒツ.1」
空間にハーモニー?


武田浩志の個展をみる冬のある日、プラハへの道を急ぐ私は交差点で立ちどまり、
遊びながら降りてくる雪に見とれていた。

壁にはペインティングがひとつ掛けられ、白い小屋がふたつ置かれている。会場の床
の一部分は剥がされ、その下ではバイオリンが音をつくる。まるで猫の鳴き声のように。
プラハという建物のなかに設置された小屋のひとつが「武田システム−三人展」。
ここで作家は他2人と作品をつくり、ひとりひとりの作品として展示するという方法を
とっている。個展の中で開かれたグループ展とも言える。そしてもうひとつは高床式
の小屋。階段を上って中へ入ると、三畳の世界が金ぴかな壁に囲まれていた。白くシ
ンプルな外観との極度なズレが待ち受ける。茣蓙がひかれ、小さな卓袱台が置かれ、
天井ではミラーボールがキラキラと回る。窓を開けるとまわりを一望することができ、
悪趣味なその部屋の中で、意外にも気分は良い。「日本のしょぼさを表現したかった」
と言う彼は、会期中そこで寝泊まりをした。まちで、普段目にする日本的な悪趣味と、
作家がつくり出すそれに違いはない。こんな風景、どこかにあったな…。
展示室の中に現れた、インチキ臭くとも共感を覚えてしまう空間。そしてそこで、
人知れず「生活」をしつづけた彼。

久しぶりの個展で、いろいろと出したそのいろいろに、関連性は見つけにくいが、
これが彼の現在だ。ペインティング、グループ展、インスタレーション、そして音。
その空間にハーモニーは存在したか?彼は今年、油彩科を卒業する。今回で自分の方向
性は見えてきたらしい。

オープニングでは、まわりを巻き込んでのパフォーマンス、「野獣派LIVE」も行い、
怪しげな一面も見せる。「総合センターみたいなものをつくりたい」爽やかな笑顔を
つくってこんなことも言う。ソウゴウセンターか…。きっと彼は、みんなでいろいろ
するのが好きなんだろう。Art NetやLOPPACO(ロッパコ)のメンバーとして、地域と
のコミュニケーションを重視した活動も行っている。それは日々の生活のなかにアー
トを滑り込ませることによって「見せる」、現場に居合わせた人たちが発するであろ
うアートに対する「問い」であり、外へと向けられると同時に、内である彼自身が孕
んだ「問い」のようだ。

ふわふわ、くるくる、空で雪たちが戯れる。耳を澄ませば聞こえる、ハーモニー?
彼も、これから何処かへ着地するのだろうか…。


かないみき
アートライター

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